スペースギア メンテナンス&DIY<燃料系>

 

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燃料ラインに水分があると様々なトラブルを引き起こす

 

燃料タンクに水が溜まる!?

 

梅雨時や、冬の前などには、よく、ガソリンスタンドで「水抜き剤が…」と声をかけられませんか? まるで、燃料タンクに水が混入しているような言い方をされますが、当然ながら、燃料に水を混ぜて売っているわけではなく、では、何故、燃料タンクに水が溜まるのか?

 

燃料タンクの中には、ガソリンや軽油だけでなく、当然「空気」も入っていますが、燃料タンクは燃料が減った分だけ、外部から空気が入る仕組みになっています。

さて、この空気、雨の日や、梅雨時などは、空気中の湿度が高く、水分を含んでいます。また、季節の変わり目や、冬季には、朝晩の気温差が激しいと、燃料タンク内外の気温差も大きくなり、空気中に含まれた水分が水滴へと変わります。これにより燃料タンクの表面や内側に水滴が付くわけです。

 

燃料タンクの中は密閉されていて目に見えないわけですが、わかりやすい例えをするなら、夏場に、コップに冷たい水を入れておくと、外側に水滴がついて、「結露」しますね。また、メガネをかけている人は、寒い日に暖かい室内に入たり、冷房の効いた室内から暑い室外に出たとき、急にメガネが曇って何にも見えなくなったりしたことはありませんか? これと似たような現象だと思ってください。 燃料と外気温との差が、結露の原因となります。

 

様々なトラブル

タンクに水が溜まるとトラブルの原因となります。どんなトラブルが発生するのでしょう?

 

燃料タンクが錆びる原因になる

鉄製燃料タンクの自動車は錆びる原因となります。ちなみに、スペースギアの燃料タンクは鉄製です。鉄製タンクはコーティングがしてあるので錆びにくい構造になっていますが、小さな傷やコーティングが剥げたところには錆びの発生が考えられます。

燃料ポンプ故障の原因になる

エンスト・ノッキングの原因になる

●冬季には、厳寒時に、燃料ラインの水分が燃料フィルター部分で凍結して、エンジン始動ができなくなる。(主にディーゼル車に多い)

 

色々な弊害がありますね。

 

「水抜き剤」の正体

さて、この燃料タンク内の水分をどうやって除去するのか?  そこで、巷で薦められているのが、「水抜き剤」というわけです。

では、水抜き剤は、どうやってタンクの水を抜くのか? 水抜き剤は、燃料タンクに溜まった水を溶かすのではなく、燃料と一緒に燃やしてしまう」のです。
しかしながら、水と油は混ざりませんし、水が燃えることはありません。

実をいうと、水抜きの主成分は「アルコール」です。水抜き剤の原理は、アルコールと水を親和させ、(水素結合と呼ばれる弱い結合を生じさせること)そのまま油と一緒に流れて、燃焼室(エンジン)で一緒に燃焼させるのです。水はアルコールと容易に混ざります。また、油もアルコールと容易に混ざります。

 

水抜き剤の問題点

とまあ、簡単に言ってしまうとこれだけのことなのですが、実は、いいことばかりではないのです。目に見えないところの水分を除去してくれるわけですが、目に見えないところで、悪さをするのも、この水抜き剤なのです。

 

「水抜き剤」は燃料タンクなどに混入した水を燃料と混ぜ合わせ、排出するための薬剤で、アルコール、セロソルブなどの水に溶けやすい溶剤を主成分としているものです。

 

最近の車は、ガソリン車でもインジェクター仕様になっていて、燃料をある程度の圧力を掛けて噴霧します。粗悪な水抜き剤の一部には、インジェクター部分で高温・高圧になると凝固しやすい性質を持ったものがあるようで、燃料ラインを詰まらせてしまうことがあるようです。

 

 

ディーゼルエンジンの車では、水抜き剤を必要としません

もともと、軽油には、ガソリンと比べると多くの水分が混入している可能性が高く、ディーゼルエンジンの燃料フィルターには、フィルターの下のほうに、「セジメンタ」と呼ばれる、水分を除去する装置がついています。

燃料フィルター内に、燃料と分離された水分がある一定以上溜まると、メーターパネル内に「水抜きをしてください」という警告灯が表示されるようになっていますが、寒冷地で車を使用される場合は、定期的に「水抜き」作業をしておくといいです。

 

ディーゼルエンジンの水抜き作業

 

作業方法は簡単です。スペースギア(SG)の場合、燃料フィルターが奥まった部分にあるので、手が入れづらいのですが、セジメンタのドレンプラグを緩めると、中に水分がたまっていた場合には、水が排出されます。水が抜けたら、ドレンを締めて、作業完了。

 

 

※シングルバッテリー車

画像をクリックすると大きく表示されます

 

 

ディーゼル車の場合、原則として、水抜き剤は必要としない、というか、むしろ、使用してはならないと考えた方がいいでしょう。

 

使用禁止理由としては、次のようなことがあげられます。
1.水抜き剤は水分を溶かして軽油と混ぜ合わされてしまう為、燃料フィルターで水分を十分除去できず、燃料噴射ポンプに水分が入ってしまい、錆を発生させるおそれがあります。
2.市販品の水抜き剤には著しく防錆性能に劣るものがあり、ユーザーには区別が付かないことが多いため、ガソリンスタンド等で入れられた場合にはトラブルが予想されます。

 

水抜き剤を使わないで済む対策

ガソリンスタンドで、水抜き剤を薦められるのは、エンジンにとって、有効なものだからではなく、かんたんに利益を生み出すものだからなのです。先述のように、水抜き剤の主成分はアルコール。非常に安価なものですが、ガソリンスタンドで入れられると、1本数百円もします。1円単位で価格競争をしているガソリンスタンドにとっては、売りたくて仕方がない商品なのです。

 

とはいっても、燃料タンクに水が溜まるのも心配という方に、裏わざというほどのことではありませんが、ちょっとしたアドバイス。

 

燃料タンク内に、水を溜まりにくくする方法があります。
それは、
「絶えず燃料タンクを満タンにしておく」ことです。結露の原因が、空気中の湿度と内外の気温差だということを述べましたが、燃料タンク内をいつも燃料で満たして、タンク内の空気が少なければ、水分が溜まる確率もぐんと下がります。

 

逆に言うと、比較的距離を走る人で、頻繁に給油している人は、あまり心配は要らないわけです。心配なのは、たまにしか車に乗らないとか、燃料タンクが空に近くなるまで給油しない人。長期間、燃料タンクを空にしていると、結露で水分が溜まりやすいかもしれません。(その季節や天候状態により状況は様々です)

 

寒冷地では燃料中の「水分」が原因で燃料が凍る!?

では、燃料タンクに水分が混入していて、冬季の凍結が心配だという人は、どうしたらいいのでしょうか?

 

対策としては「寒冷地の、現地の給油所で燃料を入れる」こと。特に軽油では、寒冷地では、「寒冷地軽油」(JIS特3号)が使われています。 ですから、いくら寒冷地でも、現地で生活している人が、毎日のようにエンジン始動不能に陥ることはありません。特に、ガソリン車では、燃料が原因で凍ってしまうようなことはまずないです。

 

ディーゼル車に多いのですが、温暖な地域で給油した燃料のまま、スキーに出かけ、一泊して翌朝エンジンが掛からなかったという場合。軽油は、1年を通して、JISで定められた5種類の軽油を、その地方の気温によって使い分けるように流通しています。寒冷地では、凍りにくい「寒冷地軽油」が使用されているのですが、温暖な地域で使用されている普通軽油で寒冷地へ来て、無給油で翌朝を迎えると、エンジンが始動困難に陥ることがあります。この場合、燃料フィルター部分がシャーベット状になっていることが多いので、この部分に熱湯を掛けてとかしてやると、エンジンを再始動できるようになります。

(他にも、ディーゼル車の場合は、グロー不良などの原因で、極寒時にエンジンが再始動できないこともあります)

 

※この方法で、エンジンを再始動したものの、走行後しばらくして、エンストしてしまった場合。この場合は、燃料タンクに「灯油」を入れて、燃料を解凍してください。「軽油」ではなく「灯油」の方が効果を得ることができます。灯油は、自動車燃料ではないため、税法上は、軽油取引税の脱税となってしまいますが、ご容赦を… 燃料の凍結で自走不能になった場合の、緊急事態ということで、裏技として覚えておくといいです。

 

もともと、寒冷地軽油には、灯油と同じ成分がブレンドされているのです。夏の軽油は、重油に近い成分で、冬の軽油は、灯油に近い成分なので、燃料タンク内で凍結しているような緊急時には、タンクに灯油を入れると、応急処置ができるというわけです。灯油100%で走行するわけではないので、その後の故障の心配は、まずないです。


 

<参考資料>

下記の文章は、出光興産のサイトから引用しています。

http://www.idemitsu.co.jp/gasoline/gasoline_05_01.html

 

軽油は、温度が下がるとワックス分の結晶が析出して燃料フィルターに詰まり、燃料がエンジンに供給されず、エンジンが止まってしまいます。「目詰まり点」とは、軽油がプレフィルターを通ることができる目安の温度のことです。また「流動点」とは、軽油全体が固まったような状態となり、燃料パイプの中を流れなくなる温度をいいます。冬季用の軽油は、この温度が低くなるように作る必要があります。

 

ガソリンの場合、オクタン価と季節や地域の特性にあわせた「蒸気圧等」の違いで分類されますが、軽油の場合はJIS規格によって、主に目詰まり点や流動点の違いにより、特1号から1、2、3、特3号までの5種類に分類されます。

北海道など寒冷地の冬季用である特3号軽油の流動点は「−30℃以下」。この特3号を暖かい地域で夏場に使用すると、「低温流動性」には問題ありませんが、燃料噴射装置の潤滑性に関係する「動粘度」が低すぎて、トラブルを起こす可能性があります。

 

項目
特1号
1号
2号
3号
特3号
品確法
強制規格
引火点
50以上 >45以上
90%留出温度
360以下 350
以下
330以下 360
以下
流動点
+5
以下
−2.5
以下
−7.5
以下
−20
以下
−30
以下
目詰まり点
−1
以下
−5
以下
−12
以下
−19
以下
10%残留炭素分
質量%
0.10以下
セタン指数 50以上 45以上 45
以上
動粘度 30℃
mm2/s{cSt}
2.7
{2.7}以上
2.5
{2.5}
以上
2.0
{2.0}
以上
1.7
{1.7}
以上
硫黄分 質量%
0.0050以下 0.0050
以下
密度(15℃)g/ 0.86以下

 

 


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