「時代」 各社ミニバンの誕生
<時代>
それまでの1BOX車は、前輪よりも前に運転手が座る構造をしていたために、正面衝突時のキャビンの損傷はひどく、商用車・貨物車という割り切りの上で使われていた傾向にある。
時代の変化とともに、そのままではいけないということで、当時、衝突安全基準の見直しが図られた。正面衝突時に乗員を保護するため、車体のフロントにクラッシャブルゾーンを設ける必要が出てきたため、従来からあるキャブオーバー1BOXタイプには、基本構造はそのまま、ボディ前面をやや改良して、衝突安全基準をクリアしていく車種もあったが、多くは、短い鼻先を持たせて、1.5BOXとか、1.3BOXといわれるう言葉が使われるようになってきた時代。
その中で、三菱デリカスペースギア(乗用車)とデリカカーゴ(商用バン)が発売されたのだが、特筆すべきは、この短いボンネットの中にエンジンを搭載した、国産初の1BOXミニバンであるということ。
<ミニバンの定義>
アメリカ車の、「フルサイズ・バン」をサイズダウンしたのが「ミニバン」の始まりで、小型で、ボンネットを持つ、いわゆる「2BOX」タイプで、3列シートを備える形状の乗用車を呼ぶ。従来からある3列シートワゴンは、運転席下にエンジンを搭載した、キャブオーバータイプの1BOXスタイルであったが、床面が高く、前輪の前に運転席があるため、普通乗用車とは運転感覚のまったく異なるものであり、ミニバンは、その点では、普通乗用車に近い運転感覚で扱えるようになった。
ミニバンと呼ぶ定義には諸説があり、ツーリングワゴン、トールワゴンなどとの区別がつきにくいが、ここでは、デリカスペースギアの比較対照として、各社のミニバンを取り上げるため、便宜上、次のように定義する。
<キャブオーバー型1BOX車の後継モデルとしての、ミニバンの定義>
・短いボンネットを持つこと
・3列シートを持つこと
・背の高いトールワゴンであること(全高1.7m超) ※高さ制限の厳しい立体駐車場は1.6m制限
・スライドドアとリアゲートを採用すること
以上4点、すべての条件を満たす車を、ここでは比較していきたいと思う。
<ミニバンの代表格でありながら、ここでは省略する車種>
・国産車のミニバンとしては、1982年発売の、日産「プレーリー」と、三菱「シャリオ」が元祖ともいえる。スライドドアを採用したり、コラムシフトを採用するなど、ミニバンの先駆的な存在ではあるものの、短いボンネット・背の高いトールワゴンという点で、ここでは割愛させていただくが、ミニバンの歴史を語る上では、押さえておきたい。
・ミニバンブームに火をつけた、ホンダ「オデッセイ」も、3列シートを持つミニバンスタイルではあるが、スライドドアではないことから、ここでは割愛させていただく。同様の理由から、マツダ「MPV」も外させていただいた。
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